尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態です。
尿失禁は次の四つに分けられます。
・腹圧性尿失禁
・切迫性尿失禁
・溢流性(いつりゅせい)尿失禁
・機能性尿失禁
一つだけの状態ではなくいくつかの尿失禁が混合している事もあります。
咳をしたり、重い物をもったりした時等、お腹に力がかかったときに尿が漏れてしまう状態です。
女性の方に多く(男性の2~3倍)、女性の約4割を超える方が悩まされているといわれています。
年齢別の頻度では45~50歳でピークをなし、その後、高齢者で再度増加します。
50歳前後のピークでは軽症の方が多く、高齢者では重症の方が多い傾向にあります。
女性の方に多い理由としては、尿道の長さが男性では約25cmなのに対して、女性では約4cmしかなく、女性の会陰部は膣や尿道口が存在し、男性よりも骨盤の底を支える力が弱い傾向にあります。
年齢の変化で骨盤の底を支えている靱帯、筋肉が弱くなり尿失禁が発生しやすくなります
尿漏れは毎日ではなく、漏れ具合もほとんどきにならない。
下着を替えたり、パットをあてたりする必要がない。
この程度であれば特に治療の必要はありませんが、骨盤体操を行うことで悪化が防げる事があります。
漏れる量は下着を替える程度ではないが、毎日ある。
または、毎日はないが下着を替える必要がある。
この程度だと、骨盤底筋体操や内服薬、低周波治療で治る事が多いです。
毎日下着を交換する必要があるほどの尿失禁がある。
骨盤底筋体操や内服薬、低周波治療で改善しない場合は、手術を考慮する必要があります。
毎日5回以上の尿漏れがあり、下着の交換が必要であったり、パット、おむつを使用したりしている状態。
手術が必要な事が多いですが、局所麻酔での短期入院による手術が可能なケースが多くあります。
尿が出にくくなる病気があり、膀胱に尿が貯まっても排泄できずに、最終的に漏れだしてきてしまう尿失禁の状態です。
おおもとの原因は、尿がでにくくなる排尿障害にあり、前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、糖尿病が疑われます。
排尿機能には異常はなく、身体運動の障害や低下、認知症が原因でおこる尿失禁です。
体が動かせないためトイレに間に合わなかったり、認知症のために排尿していい場所かどうか、わからなかったりして、排尿してしまう等です。
尿失禁はQOL(生活の質)を損なう事が多く、問診及びチェックシートにて、現在の尿失禁の状態、生活に及ぼしている影響を確認します。
60分パットテストという、60分間で尿漏れの量をチェックするテストもあります。
血液検査にて、糖尿病などの内科的疾患が無いかを検査します。
また、尿検査にて尿路感染、出血の有無等を確認します。
会陰部の診察にて膀胱脱、子宮脱、直腸脱等の骨盤臓器脱の合併がないか、会陰部の変形がないか、骨盤低筋の収縮に異常がないかを診察します
膀胱での尿を貯められる機能と知覚を調べます。
尿道の閉鎖機能を調べます。
腹部の圧力や、排尿筋によって膀胱内に生じる圧力に対する尿道閉鎖機能を調べます。
尿排出機能全般に対しての検査です。
下部尿路の形態と機能を同時に評価します。
腎臓、尿管、膀胱の形態学的異常が無いかや、残尿の測定に使用します。
腎盂、尿管、膀胱を造影剤で写しだす検査です。
造影剤で膀胱を充満し、尿道から細い鎖を挿入し、安静時、立位、腹圧をかけた時の膀胱、尿道の動きを観察します。
腎臓、尿管、膀胱の形態学的異常がないかを検査します。
また、安静時と腹圧をかけたときの状態をCTで観察し、骨盤内臓器の動きを観察する事もあります。
MRIで各臓器の異常がないかを観察します。
膀胱内を直接観察する検査です。
膀胱内の細胞を採取する事も可能です。
排尿、畜尿のメカニズムを説明し、排尿間隔を延長する訓練です。
おもに切迫性尿失禁の患者様に有効ですが、腹圧性尿失禁に対しても有効な事があります。
骨盤底を支える筋肉群を強化する体操です。
電気刺激治療の一つであり、弱くなった尿道閉鎖機構の活動性を強化するのと、過活動膀胱を抑制する目的があります。
尿を貯留する機能に障害がある場合は、抗コリン薬やα遮断薬、ホルモン製剤、抗うつ薬等を使用します。
コリン作動薬を使用します。
性器脱の治療に使用する器具ですが、尿失禁に対しても有効な事があります。
腹圧性尿失禁が一番の適応であり、局所麻酔で行う事も可能で、短期入院での治療が可能です。
他にも様々な手術方があり、状態に合わせて選択します。